あるところに、一本の川が流れていました。

でも、水は汚れて濁り、いやな臭いがあたりに漂っていたので、近くに住む人たちはその川を避けて、

「早く埋め立てられて、清潔な場所にならないかしら」

と、いつも噂していました。

そんなある日、川の中ほどに誰かが水車を設置しました。

近所の人たちは、何のために水車が置かれたのかわからず、

「あんな汚い川に、水車なんて置いてどうするんだろう?」

とまた噂になりましたが、その川のことはあまり話題にしたくないので、ほとんどの人が

すぐにそんなことは忘れてしまいました。

自浄作用5

しばらくすると、その川に鳥が飛んでくるのをよく見るようになりました。

近くを散歩している人たちは、川が臭わなくなっていることに気づき始めました。

そして、ときおり表面を跳ねる、小さな魚が泳いでいるのを見ることもありました。

さらに日にちが経つと、川は少し透明になってきました。その頃には、鳥の数も増え、はっきりとわかるような大きな魚も住むようになりました。

いつのまにか、釣りをする人や、川で遊ぶ子供たちも帰ってきました。

今では、川のまわりに素敵な公園もでき、近所の人は美しい川が戻り、埋め立てられなかったことに感謝しています。

その汚かった川は、昔のように皆に愛される、人々の憩いの場所に戻ったのです。

…このお話は、実際に水車をつけることでキレイな川を再生させた、ある自治体の実話をもとに、内容を要約してご紹介しました。

日本では一時期、河川の汚染が大変問題になっていましたが、現在は各地でいろいろな方法によって浄化が行われています。

中でも最も簡単で経費のかからない方法が、この「水車を設置する」というやり方なのです。

もちろん、すべての河川で有効と言うわけではありませんが、自然の摂理を利用した素晴らしい方法です。

では、なぜ、水車をつけるだけで水が浄化されるのでしょうか?

 

水を浄化させる小さなヒーローたち

自浄作用2

水車で川の水をキレイにしたのは…実は、水中に生息する「微生物」だったのです。

水車をつけることによって水が浄化されるメカニズムを説明しますと、まず、淀んだ水を動かすことで水が活性化されて微生物が生息しやすくなります。

そして撹拌されて水に酸素が入ることで、微生物は水中の有機物を取り込んで分解し、キレイな水になっていく、ということです。

もう少し詳しく説明しますと、川が生活排水などで汚れると、水中のアンモニアの濃度が高くなりますが、このアンモニアは、水中の細菌と結びついて酸化し、亜硝酸という物質に変化します。

その亜硝酸が細菌によりさらに酸化すると、硝酸という物質になります。

二つの物質を合わせて「硝化細菌」と言いますが、硝化細菌という微生物が水の中の汚泥原因である有機物を発酵、分解してキレイな水と二酸化炭素に変えるのです。

も簡単で経費のかからない方法が、この「水車を設置する」というやり方なのです。

水車による水の撹拌は、空気中の酸素をたくさん送り込むことで、水中のアンモニアを酸化させて、微生物を活性化させるために一役買っていたというわけです。

また、水流の弱い川や池などでは、夏になると大量にアオコといわれる藻が繁殖してしまって問題になることがあります。アオコが繁殖すると、やはり水中に酸素が欠乏してしまうために魚が死んだり、汚泥の原因となる有機物が多くなったりします。

アオコの繁殖は、水中のリンの濃度が高くなることに関係していますが、微生物の中には、リンを食べる種類もあるのです。

このように、自然界には自然の摂理による浄化作用があり、ことに微生物は、水を守るスーパーヒーローと言えるでしょう。

 

水道水になるまでの水の変遷

さて、川の水が微生物の繁殖によって浄化されるというお話をしましたが、私たちが飲む「飲料水」は、どのように浄化されているのでしょうか?

現在、川に微生物がきちんと繁殖していても、そのままの状態で飲める水になるか?と言えば、それは難しいと言えます。

それだけでは、生活排水や下水から排出される水に含まれる有害な細菌や不純物を除去し、飲める水にできるまでには至りません。

そこで、浄水場における水の浄化の流れを簡単に説明します(東京都の場合)。

海や川、湖などから運ばれた水は、最初に沈殿・濾過が行われます。

沈殿は、沈澱池において、砂や土を沈めて取り除いた後、水の濁りを固める凝固剤によって、さらに汚れを沈め、上澄みの水を濾過池に送ります。

濾過の方法は、主にその細かさによって4段階に分けられますが、ここで粘土や藻、原虫類、ウイルスや細菌となる物質を除去していきます。

自浄作用3

次に、オゾンの注入によってオゾンの強い酸化力でカビの臭い、農薬などを分解します。

そしてそれを「生物活性炭処理」によって浄化させますが、この時に使われるのが微生物なのです。生物活性炭とは、水の浄化に有益な微生物を付着させた活性炭です。

活性炭とは、木材などを焼いて炭にしたものをさらに高温で加熱処理し、多孔構造を多く持たせることで不純物の吸着率を飛躍的に高くしたものです。

生物活性炭処理に使われる活性炭には表面に微生物を付着させているため、活性炭の吸着作用と微生物の分解作用によって、水の浄化を強力に促しつつ、臭いのもととなる有機物もしっかり取り除いてくれます。

活性炭は消臭剤として有名ですが、消臭剤に使われるのも、活性炭の吸着力によるものです。

 

そして最後の仕上げが「消毒」です。

ご存知の通り、日本の水道水には、塩素が含まれています。

これは、病原菌となる細菌の繁殖を防ぐために、消毒用として使用されています。水道水への塩素の注入は1921年から始まったそうですが、これによって水が原因の伝染病の患者数が激減したのは素晴らしいことだと思います。

しかし最近は、逆に塩素の害というのも言われ始めています。

微量とはいえ、塩素自体が人体にとって有害な物質であるために、蓄積による人体への影響は無視できない問題となってきています。

お風呂では、気化した塩素を吸引してしまうことで、飲むよりも多くの塩素を体内に取り入れてしまうという報告もあります。

また、塩素によって水道管が錆びることで出てくる「赤水」は、少量なら問題はありませんが、やはり蓄積によって人体に負担がかかるのは同じことです。

もちろん、そんなに神経質に考えすぎるのもいけませんが、いつもなんとなく体調が悪いという方や、アトピーなどで悩んでいる方は、いつもの水を変えてみる、というのも一つの解決方法になるかもしれません。

 

人に自浄作用はあるのか?

自浄作用4

さて、自浄作用に話を戻すと、人間自身には自浄作用はあるのでしょうか?

答えは「Yes」です。

人体には500種類状の細菌が繁殖していると言われますが、そのうちの多くは有用菌として働く微生物です。

例えば、顔や髪の毛などにも微生物が生息しています。

それらが働くことで汚れや不要な悪い細菌を除去し、肌を保護しているので、洗いすぎるとその作用が失われて、逆にかゆみが出たり、肌が荒れたりしてしまうのです。

また、腸内細菌は約100種類、おおよそ100兆個棲んでいると言われますが、その中には、消化液で消化しきれなかった食物を分解して処理するものや、腸管内の免疫力を高めて悪い病原菌から体を守ってくれるものも数多く存在します。

免疫力は腸で作られる、とも言われるくらい、腸内細菌のバランスは健康に大きな影響を持っています。

腸内細菌と言うことでは、近年問題になってきているのが「O-157」です。

この菌は、消毒によって大腸菌を排除し過ぎたことが原因で現れた菌で、先進国にのみ出現した、と言われています。

病気になって重症になったのは、外で泥んこ遊びなどをしない、除菌をよくするような家庭に育った子供が多かったようです。

現代の、いわゆる「清潔病」ともいえるような現象ですね。

ある病気を防ごうとして消毒をしたら、別の病気にかかるなんて、人間の体は複雑です。

しかし、人の体の自浄作用というのは、言い換えれば自然治癒作用ともいえるわけで、悪いものが入ってきたらそれを追い出して体を整える力が備わっているわけです。

その力を発揮させるためには、自分の体の本来の能力を信じて、体の免疫力を整えることが必要になってきます。

人体は70%が水でできています。

それを考えると、最も簡単な「自浄作用」は良い水を飲むことではないでしょうか?

川が「循環」することで浄化されるように、人の体も、水分を循環させることで健康が保たれます。

水の循環が悪くなると、体に栄養が行き渡らなくなり、免疫力を弱めます。

良い水を取り入れて、体の水を常に浄化し、循環のよい生活を心がけることが、健康への第一歩かもしれませんね!

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